第二回導入編(Certificate Course)活動レポート
2010年2月24日~3月10日の間、バングラデシュにて第2回マイクロファイナンスプロフェッショナル養成コース導入編が開講されました。
インターン生として参加をした井上よりレポートさせていただきます。
今回も第1回に引き続き、金融、コンサルティング、メーカー、JICA、大学生等様々なバックグラウンドを持つ総勢20名の方々に、日本及びネパール、エチオピア、アメリカからご参加いただきました。
●「バングラデシュでマイクロファイナンスを学ぶという点に興味を持った」
●「マイクロファイナンスがどのように成功したのか。世の中で脚光を浴びている新しい仕組みを現場に行って学びたい」
●「将来マイクロファイナンスやソーシャルビジネスに携わりたいと思っている。そのための今後のキャリアを模索したい」
等、様々な動機持った方々が集まりました。
8日間の講義と4日間のフィールド訪問を通じ、理論と実践を包括的に学び、参加者の間では日々活発な議論が繰り広げられました。
コースの醍醐味の一つであるフィールド訪問では、Safe Save, ASA, BRAC, BUROの4機関のサービスを提供している現場を訪れました。
Safe Saveは貯蓄サービスを中心に提供しています。
マイクロファイナンスはグループによる連帯によって、貸付の返済を担保することが一般的ですが、Safe Saveは個人ベースでの貸付を行っています。
ローンオフィサーが毎日各家庭を訪問し、密なコミュニケーションを図っていること、柔軟な返済が可能なことが個人ベースの貸付を可能にしているようです。
参加者からは、
●「自分は読み書きができないが、子供には良い教育を受けさせたいので融資を受けているという家庭もあり、興味深かった」
●「ローンオフィサーの女性たちも生き生きと仕事をしていた。毎日200軒以上の家庭を訪問し、しっかりとした信頼関係を作っていた印象だった」
という感想が上がりました。
ASAは非常に効率性が高く、よりビジネス志向の強いマイクロファイナンス機関です。ローンの内容も、ビジネスに関わるものが主体です。標準化により効率性を高め、持続性を高めている点が印象的でした。
BRACは、Grameenと並ぶ規模を誇り、多種多様なプログラムを提供しています。
マイクロファイナンスは通常、貧困層の中でもある程度の収入が確保されている層のみをターゲットとしていますが、BRACは通常ではカバーされない最貧困層にもサービスを提供しており、今回はこのUltra Poor Programを見学することができました。
このプログラムは、最貧困層の家庭に家畜などを無償で提供し、教育やトレーニングを通じて安定的な収入が得られる基盤を構築することで、最貧困層のボトムアップをサポートしていています。
フィールド訪問では、このプログラムを受けている家庭と受けていない家庭を訪問することができましたが、その経済力の差は歴然でした。
「こんなにも人生を劇的に変えている現場は無いという位、女性たちが生き生きと、自信に満ちていた。一番心に残るプログラムだった」(参加者談)
また、BRACは村内で委員会を組織化し、富裕層を巻き込んで貧困削減が自分たちの問題であることを意識させ、自ら問題解決のために行動するように働きかけています。
Ultra Poor Programを行うにあたり、サービスを受けられる家庭と受けられない家庭がでてきてしまいますが、そこから生じ得る問題を公平に解決する方法を村人の中で議論し、実行するよう導いています。
結果の部分だけでなく、その実行の過程で生じ得る問題にも向き合う姿勢は、サービスを受ける側の目線に立ったBRACならではの、非常によく吟味された手法であると感じられました。
BUROはBRAC等に比べて規模は小さいものの、非常に透明性が高い、優良なマイクロファイナンス機関です。貸出利率は比較的高く設定されているものの、最高格付けを保有しており、単なる慈善事業ではなく、持続的なサービス提供を可能にしています。
講義では、ターゲティングの重要性と困難さ、規制の必要性、フォーマル金融機関の参入状況、マイクロファイナンス機関の資金調達の現状、テクノロジーの可能性、マイクロファイナンス機関のIPOを巡る議論等々の最新のトピックを幅広くカバーし、体系的にマイクロファイナンスを理解できました。朝から晩までしっかりとスケジュールが組まれているにも関わらず、早朝から有志で集まって勉強会を行うなど、大変意欲の高い方々ばかりでした。
参加者の中でも人気が高かったのは、BRACのSocial Enterprisesの授業でした。
BRACは世界最大のNGOですが、その規模(従業員10万人以上!)とビジネスセンスには感銘を受けました。
彼らは預金や貯蓄サービスを提供するだけでなく、マイクロファイナンス利用者が作った布や革製品を販売するべくAarongというデパート事業を行っていたり、マイクロファイナンス利用者から正当な価格で生乳等を買い取って販売していたり(バングラデシュでの牛乳シェア2位!)と、マイクロファイナンスだけでなく、雇用やマーケットを創出するなど、貧困削減のために包括的なアプローチを用いています。
日本の旧財閥やインドでいうタタグループにも匹敵する存在感がありながら、貧困削減を目指し、圧倒的な規模と優秀な人材、洗練された戦略を有する世界有数のNGOであることを実感しました。
2週間のコースを終えた参加者の皆さんは、それぞれ自分が抱えていた問題意識やキャリア形成について、様々な気づきや思いを持ち帰ることができたようです。
最後に、このプログラムを通しての参加者の方々からの感想の一部を紹介させていただきます。
■政府ではない民間での活力を動員し、金融という新しい公共インフラの提供を行うことができると気づいた点は大きい。
■今まで自分の存在が地域で無視されてきた女性たちが目を輝かせて、今は自分の居場所があると話していたのがとても印象的だった。本やインターネットで得た知識とは異なり、現場で自分の目で見て人と話して学ぶことがいかに大切か分かった。
■貧困撲滅のため、途上国の人が、仕事に就き、収入を増加させ、自立していけるようにサポートしていきたいと思っていたが、今回、マイクロファイナンス機関のサービスが幅広く、雇用創出や、サービス利用者のビジネスが成功できるように総合的に支援していることが分かり、マイクロファイナンスにより興味を持った。
■マイクロファイナンスは貧困層に金融へのアクセスを提供するのみならず、その隅々まで行き渡ったネットワークが、教育やヘルスケアサービスの向上を可能にし、潜在的消費者を結ぶツールとしてビジネスの可能性をも秘めている点は非常に興味深かった。
このコースで得た経験を通じて、参加者の皆さんがそれぞれのフィールドでご活躍されることをスタッフ一同、心よりお祈り申し上げます。