第3回導入編(Certificate Course)活動レポート
2010年10月10日~10月24日の間、バングラデシュにて第三回マイクロファイナンスプロフェッショナル養成コース導入編が開講されました。
今回も過去2回に引き続き、金融、法曹、NGO、学生とさまざまなバックグラウンドを持つ日本人参加者にご参加いただき、更にはザンビア、バングラデシュからの参加者も加わりより一層多様なバックグラウンドを持つメンバー総勢14名で約2週間を過ごしました。
今回は、行きの飛行機がキャンセルになりメンバーの一部の到着が遅れてしまうというハプニングにも見舞われましたが、
●「マイクロファイナンスと自分の専門分野である保健・医療分野との新たな可能性を探りたい」(NGO勤務の男性)
●「マイクロファイナンスを、どのように途上国・先進国(日本)の貧困問題にあてはめ、機能させるようにできるのかを見つけたい」(米系銀行勤務の女性)
●「マイクロファイナンスの適切な規定をどのように発展させられるかを知りたい」(ザンビア人銀行勤務の女性)
といった意気込みのもと、コースがスタートしました。
講義は、主にBRACの本部であるBRAC CentreまたBRAC大学にて行われ、BRAC大学開発学部長のハシェミ教授による講義を中心に、CGAPやバングラデシュ中央銀行、グラミン銀行などバングラデシュにおけるマイクロファイナンスのエキスパートによって行われました。
参加者からの講義に関する感想としては
“Regulation and Supervision”- Mr. Greg Chen, Regional Representative for South Asia, CGAP
●「マイクロファイナンス機関(MFI)の資金調達は、Authorityによる規制など、あまり今まで考えたことが無かったが重要な視点を提供してくれた」(アフリカでNGO勤務の男性)
“BRAC Social Enterprises”;- Ms. Tamara Abed, Director, BRAC
「社会企業の話は大変示唆に富むものだった。いかに利益と社会発展のバランスをとっていくか、という命題はバングラデシュだけでなく、日本を含めた世界共通の課題かもしれないと思った。」(NGO勤務の男性)
という声がありました。
また講義と並行して、
SafeSave、BRAC、 Ultra Poor Program、BURO、ASAのフィールド訪問をしました。
SafeSaveは、貧困層への金融サービスは貯蓄がもっとも重要であるとの理念に基づき、貯蓄を主体とした柔軟なサービスを都市のスラムで展開するユニークなNGOです。
SafeSaveでは、マイクロファイナンスでよく言われるグループ融資ではなく個人単位で貸し付けを行っている点、またPalm Topと呼ばれる端末を使って顧客情報の管理をしている点でも他のMFIとの差別化がはかられています。女性のローンオフィサーが直径約1kmの範囲にいる顧客の家を毎日を訪問し、顧客との密なコミュニケーションをとることで、個人貸付を可能にしているようです。
日本では、口座を保有する事は当たり前のように感じてしまいますが、宗教やさまざまな環境により今まで自身でお金を管理するという権利を持つことが出来な かったスラムの女性が自分の口座をもっていること、きちんと貯蓄をしていること、またそれを子供の教育など将来どのように使いたいかについて目を輝かせて 話してくれたのはとても印象的でした。
●「顧客の生の声を聞けたことが良かった。本などで女性が貯蓄をするときは家族のためだ(子供の教育費など)と言われていることが、本当だということを顧客のヒアリングで実感できた。」(米系銀行勤務の女性)
BRAC Ultra Poor Prgramは、マイクロファイナンスのサービスを受けるにはまだ脆弱な環境のもと生活する最貧困層に対して、家畜などを無償提供し、家畜の飼育を始め、生活全般にわたり知識やトレーニングを2年にわたって提供するというものです。
フィールドでは、かつて物乞いで他の家から物やお金をもらう生活をしていたものの、Ultra Poor Programに参加し、家畜の飼育に始まり、農耕などを通じて収入をあげ、貯蓄をするようになり、今では子供たちの教育をきちんとさせるに加え、レンガ の家を建てるまでに至ったという方にもお会いする事ができ、マイクロファイナンス、BRACの活動がいかに人々の生活にインパクトを与えてきたかを垣間見 ることができました。
BRAC は、元々が農村開発のNGOとしてスタートしたこともあり、プログラムを受けられる方が公平に選ばれるように村の中にコミッティを組織し、村全体の問題で あることを意識 させ、組織とリーダーシップおよび経済的スキルの訓練を提供する中で、村内の富裕層も巻き込んで、どの家庭が本当にサービスを必要としているかを見きわ め、自分たちの力で貧富の差の問題を解決、効果を継続できるよう工夫しています。訪問した村では、コミッティの執行委員会のメンバーにUltra Poor Programの卒業生の女性2人も入っていました。
「NGOの活動やマイク ロファイナンスの活動を通じてここまで生活が劇的に変わるのかということに驚きを覚えた。この成功例をいかに上手くいかなかった人達またはまだサービスを 受けることができていない人達に活かしていくことが出来るのかもっと考えたい、知りたいと思った。」(経済系大学院生の女性)
BUROは、非常に透明性が高い、優良なマイクロファイナンス機関です。商品数が多く、他のMFIが行っていないようなニッチなサービスも提供しています。
BURO では、フィールド、ブランチオフィス、エリアオフィスの3箇所でお話を聞かせていただきました。オフィスでの講義では、どのように顧客を選ぶかの基準、金 融以外のサービスについて、マイクロファイナンス機関の資金調達に関してなど、細かく教えてくださり、参加者からの質問が飛び交い活発な議論が行われまし た。
ASAは、商業的アプローチで業務を行っており、世界で最も効率性の高いMFIの一つと呼ばれる機関です。
今回は時間がなく、オフィスへは行くことができなかったのですが、2グループに分かれ、グループミーティングにお邪魔させていただきました。
コ レクターの女性は20人の顧客である女性を毎週火曜に集めて、ミーティングを行い、融資・貯蓄に関しての業務を行ったり、必要に応じてはビジネスの仕方に ついてもアドバイスを行ったり、ミーティングをして顧客の方が、安定した収入のもと、サービスを受けられるようサポートをしているということでした。
また、フィールドトリッ プの最後にはBRACの乳製品工場であるBRAC Dairyにお邪魔しました。こちらでは、牛乳やバターの生産などが行われていますが、これらの原料となる牛乳はマイクロファイナンスを利用している方々 が育てた牛から搾乳、買い取られたものです。BRACのエンタープライズでは、マイクロファイナンス利用者が作った物(乳製品、工芸品、衣類、雑貨等)を きちんと販売し、収入を得ることができるよう、Aarongというデパートまで存在しています。
本コースを経て、これから行いたいこととしては、
●「金融へのアクセスが、こんなにも貧困層にとって大事なものだとは、マイクロファイナンスの利用者と直接話すまで実感していませんでした。それを実感して、や はり”金融へのアクセス”を与えることのできるマイクロファイナンスを使い、途上国・先進国(とくに日本)の貧困問題に取り組んでいきたい。」(米系金融 機関勤務の女性)
●「今回、マイクロファイナンスを中心に学んだものの、それを取り巻く生活全般の問題(教育、保健など)に関してもより興味をもったので、今後そのような観点からもマイクロファイナンスを見てみたい。」(経済系大学院生の女性)
また、今後のキャリアに関しては、
●「今後、銀行員として働く中で、マイクロファイナンス機関に対するファンドを日本の銀行が作れないか提案してみたい。」(経済系大学生の男性)
●「より広くソーシャル・ビジネス全般にたいして 法律家として支援できないかをか考えるようになった。このような観点から、日本のソーシャル・ビジネスを見て、可能性を考えていきたい。」(法律家の男性)
といった声があがりました。
過ぎてみれば2週間という時間はとても濃く、あっという間に終わってしまいました。この場をお借りして、講師陣、訪問をさせていただいたマイクロファイナン ス機関の方々、日本・バングラデシュでコースを支えてくださったスタッフの方々、村や街であった方々、このコースを支えてくださったすべての方々に感謝申 し上げます。
そして、マイクロファイナンスはもちろんのこと、途上国支援、バングラデシュ、今後のキャリア…様々なお話をさせていただき、この2週間をより充実したものにしてくださった参加者の皆さんにも感謝いたします。本当にありがとうございました。
この2週間で得たものと共に、これから参加者の皆さんがそれぞれのフィールドでより一層ご活躍されることを、参加者としても、一スタッフとしても楽しみにしております。
レポーター:マイクロファイナンスプロ養成コース参加者兼AFFインターン 加納
興味をもたれた方は、ぜひ次回のコースご検討ください!