Microfinance Training Course for Policy and Development 実施報告 I
本研修は2013年第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の際に行われた「AFDPアフリカ首脳・経済人会議」の成果事業で、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)とアライアンス・フォーラム財団間の推進事業のひとつである「マイクロファイナンスを通した貧困削減」を目指しています。COMESA各国の中央銀行及びマイクロファイナンス機関から参加した法規制監督分野における実務者28名が7日間を通してマイクロファイナンスの法規制と監督について最新の取り組みと課題の共有、グッドプラクティスを目指した協議を繰り広げました。
2014年12月2日~8日の一週間にわたり、ザンビアにて金融包摂促進のためのマイクロファイナンスの法規制監督能力強化研修『Microfinance Training Course for Policy and Development~Microfinance Regulations &Supervision towards Financial Inclusion~』をザンビアの首都ルサカで実施しました。研修のモットーは『Economic Opportunities for poor across COMESA』で法規制監督改善を中心としたマイクロファイナンス環境改善を通し、貧困層のファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)を推し進めていく事を目指しています。この研修は、アフリカ開発銀行アフリカ民間セクター向け支援基金(FAPA)より資金が拠出され、アライアンス・フォーラム財団とCOMESAとアフリカ開発銀行が共催しました。
本研修にはCOMESAメンバー国のうち15ヶ国から28名、及び日本からの8名が参加しました。COMESAはアフリカの経済共同体としては非常に多様性に富んでおり北はエジプト、南はスワジランド、東はコモロ諸島、西はコンゴ民主共和国と様々な参加者が集まり知識を共有しあいました。
[研修プログラム、講義]
プログラムは、辻一人氏(埼玉大学教授)、菅正広氏(世界銀行理事)監修のもと、講義、各国の現状共有、アクションプラン策定の為の協議を実施しました。講師には、ケニアのマイクロファイナンス機関K-Rep銀行を擁するK-REPグループの共同創設者、Kimanthi Mutua氏とマイクロファイナンス商品開発やアウトリーチの専門家であるCheryl Frankiewicz氏やモバイルマネーに特化した急成長中のケニア民間銀行のマネージャーを迎えました。K-Rep銀行はアフリカで初めて融資を扱えるマイクロファイナンス機関と認定された機関で、その仕組みを政府担当者と一緒になって作り上げた実績があります。そのMutua氏のファシリテーションのもとで参加者は自国の現状や課題を共有し、議論や演習を通してより良い法規制監督制度の構築に役立つ対策を考察しました。
[フィールドトリップ]
マイクロファイナンス機関の様々な商品、そしてそのオペレーションを視察するために現地マイクロファイナンス機関Micro Bankers Trustを訪問しました。農家、レストラン経営者、食糧品店主など零細企業を営む顧客を訪問し、融資の活用方法や生活改善における効果、事業拡大における課題について話を聞きました。マイクロファイナンス機関側からは機関代表やローンオフィサーなど異なる立場の職員から機関運営における課題、ザンビアのマイクロファイナンス法規制監督への提言を聞きました。
※左:下町の市場を視察する日本人参加者、右:乾燥小魚を売る市場の零細企業家。
本研修の最終目的はこのような人達がより豊かになれる環境を作る事です。
さらに、日本人参加者は、ザンビア理解のため、小学校やコンパウンドと呼ばれる未計画居住地域、水道局、そしてマイクロファイナンス機関のCETZAMを訪問しました。ザンビアは2014年のGDP成長率は7%を記録し、特に首都のルサカ市ではショッピングセンターが次々に建設されるなど目まぐるしい経済発展を肌で感じる事が出来ます。一方で、コンパウンドや郊外に住む低所得層は貧困、未整備なインフラ、雇用不足などの問題に直面しており生活水準向上が進まない現状があります。参加者は、アフリカ経済成長の両方の側面を視察し、そこに存在するニーズについて考察しました。
[アクションプラン策定]
研修の集大成として、参加者は世界でのマイクロファイナンス法規制監督の現状とCOMESA各国の取り組みを比較分析し、自国でより良いマイクロファイナンス法規制監督をする為の提言をまとめました。本提言は今後COMESAの金融包摂政策に反映されると同時に、今後の、研修成果物として出版され、COMESA各国のマイクロファイナンス法規制監督における知識蓄積に一層貢献する事が期待されています。
“規制監督者と実務者が一緒に学べるとても良い機会でした。さらに、いろいろな国からの参加者が混ざって経験を共有できたのは素晴らしく、
このような研修は続けられるべきです。” Uganda, Microfinance機関連合
“私の国でマイクロファイナンスを規制監督する際、この研修を通して得たこと、例えば、信用登録や監督におけるリスクベース・アプローチといった事などを
応用させたいと思っています。” Zimbabwe, 中央銀行
※左:グループディスカッションの様子 右:ディスカッションで発言するエチオピアの参加者
[今後の計画]
COMESA各国のマイクロファイナンス法規制監督の現状や課題分析の詳細は研修レポートとして近日中に公開予定です。また、本研修で議論された課題に対する対策・改善方法を具体的かつ実行可能なレベルに落とし込むための第2フェーズの研修実施に向けて準備を進めています。第2フェーズの成果物である各国のマイクロファイナンス法規制監督改善アクションプランはTICAD VIの際に他アフリカに向けたモデルとして発表される予定です。実施報告IIでは各国が提示した優先課題についてご紹介いたします。