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第一回導入編(Certificate Course)活動レポート

今回は2009年9月初旬に開講された、第一回マイクロファイナンスプロ養成コース導入編の詳しい内容をレポートしていきます。

全10人の参加者のバックグラウンドは、前回ご紹介した通り様々。
そもそも、どんな方々がどんな想いで本コースに参加したのか。
そして、貧困層向けのファイナンスについて、書籍やインターネットでは知ることのできない、現地でこそ学べる大切な何かがあるとすれば、どのようなものか。
それを受けて、参加者それぞれの本業や生活の中でどんな変化が生まれてきたのでしょうか。
まず応募の動機からご紹介します。

社会人の参加者からは、
●「サブプライム問題の表面化以来、利益追求だけではない、顔の見える、人のためになる金融サービスをしたいと考えていた。」(米系銀行勤務の女性)
●「西アフリカで勤務していた頃、政府やNGOの提供するマイクロファイナンス機関がうまく機能していない様子だった。上手くいっているといわれるバングラデシュの現状を知りたいと思った。」(元青年海外協力隊員の女性)
など金融機関や途上国支援の現場での経験を機に、なにかアクションを起こすきっかけをつかみたい、という想いから参加された方が多くいました。

また、参加者の約1/3を占めた学生の中からは、
●「途上国支援や開発経済学について学んできたが、一方通行的な支援ではなく、
現地の人々がイニシアティブをもてる仕組みとしてマイクロファイナンスのビジネスモデルの可能性を学びたいと思った。」

●「途上国支援やソーシャルビジネスに関する理解を深めると同時に今後のキャリアについての方向性を模索したい。」
●「自分自身が低金利融資に助けられ進学してきたため、途上国だけでなくニーズのあるところでこういったビジネスを広げられればと考えた。」
という方もいました。
講義やフィールド訪問先では、貧困層に向けた適切な金融サービスとは何か、どのようなサービスが現在提供されていて、
どのような課題と解決策があるのか、包括的な理解を目指して活発な議論が交わされました。
金融の専門的な話になると、金融関係の参加者がわかりやすい例えを使って説明するなど、参加者間で協力し合う姿も多く
見られました。
マイクロファイナンス導入編の様子
講義は、BRAC(※1)大学開発学部長のハシェミ教授を中心に行われました。
他にもCGAP(※2)やグラミン銀行等のマイクロファイナンス機関(以下MFI)から、
長年マイクロファイナンスに携わる各分野のエキスパートが教鞭をとりました。

(※1)バングラデシュにおいてマイクロファイナンスを行うNGOとしては最大規模
(※2)マイクロファイナンスに関する研究、政策提言等を行う国際的なコンサルティング組織

マイクロファイナンス導入編の様子2

マイクロファイナンスは、社会的インパクトと収益性の両方を兼ね備えてこそ成立するものですが、
社会的なインパクトという定性的な成果を、可能なものは定量的に計測してMFIへの投資判断基準に盛り込む必要性と
その難しさは特に多くの参加者の関心を集めました。
講義パートで特に印象深かったことについて、
「あえてひとつ選ぶとしたらマイクロファイナンスのプロダクトについての講義。MFIが増え、競争が起こっているのではないかと思っていたが、各機関は、それぞれの地域の特性や貧困層に合わせて得意分野をもち、他との差別化を図っている。競争がないとはいえないものの、MFIの多様性は利用者のニーズを反映した結果だった。また、それを提供するMFIの多様な手法から、一筋縄ではいかない貧困の多様性を学んだ。」(アセットマネージメント会社勤務の女性)

また講義の構成については、
「マイクロファイナンスの理解を深めるにあたり、マイクロファイナンス機関の提供するプロダクトの比較、規制などの政策的観点、バングラデシュの場合だとマイクロファイナンス誕生当時の独立戦争や飢饉の歴史的背景など、様々な切り口で講義が受けられた。」(米系IT企業勤務の男性)

という声がありました。
またこの間、グラミン銀行の創設者であり、2006年のノーベル平和賞を受賞した、ムハマド・ユヌス博士と面会し、グラミン銀行の歴史と哲学について話を伺う機会がありました。
「たとえとりまく環境が完全なものでなくても、各自が一歩を踏み出して実行に移すことが世界を変えることにつながる。」
との言葉に参加者一同勇気づけられました。
ムハマド・ユヌス博士
講義と並行して、 BRAC、BURO、SafeSave、GRAMEENのフィールド訪問をしました。
ダッカから車で数時間はなれた村やスラムで、マイクロファイナンス利用者やMFIスタッフの実際の生活を見聞きすることで新鮮な驚きがありました。
グラミン銀行では、規律を重視し、貧困層への金融サービスの提供に加えて、女性の自立を支援しています。
マイクロファイナンスコース_フィールド訪問の様子

訪問した村では20年間グラミン銀行のサービスが提供されており、当初は小額のローンを借りて、マイクロ起業家として小さな商売を始めた女性達も徐々に信用力をつけて、今では子供に高等教育を受けさせ、自らはリキシャーや家のオーナーとなり、安定的な収入を得ることができるようになりました。
私たちに20年間の経緯を話してくれる女性達の姿は自信に満ち溢れていました。
「MFIが新しくブランチを開く際は、地域の住民を一軒一軒回って説明しているという話がとても印象的だった。」(投資銀行勤務の男性)

BRACでは通常のマイクロファイナンスではなく、最貧困層をターゲットにしたウルトラプアプログラムの現場を視察しました。
ウルトラプアプログラム_現場視察の様子
このプログラムは、最貧困層の家庭に家畜や補助金などを無料で供給し、経済的自立や衛生環境の改善に向けた教育やトレーニングを通じて安定的な収入が得られる基盤を構築することで、マイクロファイナンスも通常受けられない最貧困層のボトムアップをサポートしていていました。

BUROでは、グラミンやBRACと比べて規模は小さく、ローンの利子は高く設定されているものの、受益者とより有効な信頼関係を構築することで、他のマイクロファイナンス機関との差別化を図っています。
ウルトラプアプログラム_現場視察2

毎週決まった時間から行われる90分間のグループミーティングは、終始和やかな雰囲気で行われており、お金のやり取りだけではなく、教育や健康、衛生など、様々な開発の問題を話し合う場としても活用されています。
BUROの利用者で、サリー織で生計を立てる男性は、

「妻がBURO会員のおかげで、比較的に低金利で(年率14.8%)ローンを組んでいる。サリー織機も約10年前に妻が会員になったことで、積立で購入することができた。」

と話してくれました。
現在のローンの使い道はサリー生地やデザイン画調達以外に、子供の教育費にもなっているそうです。
「現場で貧困層やMFIのスタッフとのインタビューを通じて、利子率が多少高くても、速く、安心してサービスを受けられる機関を見極めて選んでいることが発見だった。」(国際開発学の大学院生)

インタビューの様子

インタビューの様子2

SafeSaveは、貧困層への金融サービスは貯蓄が最も重要であるとの理念に基づき、貯蓄を主体とした柔軟なサービスを都市のスラムで展開するユニークなNGOです。
写真は、独立戦争時のパキスタン人難民移住地域で、SafeSave会員の家庭を訪問した際の様子です。
女性のマネーコレクターが各家庭に毎日訪れ、ポータブルデバイスを使って、顧客の取引を管理しています。
他のマイクロファイナンス機関とは違って、毎週のローン返済が義務付けられておらず、利用者は好きなときに好きな額を貯蓄し、返済することができます。

●「貧困層の所得改善、子供の就学率の向上、女性の家庭内・社会的な地位の向上などの効果を高める為には、マイクロファイナンスも、本来の金融業と同じで産業・地域活性化の一手段として用いられることが重要だと再認識した。」(米系銀行勤務の女性)
●「衛生環境は決していいとはいえないスラム街であったが、そこで生まれ育ったため、そこを故郷として生きていくことを喜ぶ人々の土着の精神が伺えた。」(米系銀行勤務の女性)

本コースを経て、今後ぜひ引き続き学びたいこととしては、
●「マイクロファイナンスによって自立を果たした人々の事業が、本当の意味で成り立ち、マクロな視点で生活水準を向上させていくにはどうしたらいいか。」(元青年海外協力隊員の女性)
●「MFIの具体的な運営方法および新規市場での立ち上げ(例:アフリカでは人口密度の低さやコストの高さから、他の地域と比較して利率が高くなっており、また貸し倒れ率も高いのが現状)における人材育成の方法論など」(経営学専攻の男性)

今後のキャリアや抱負については、
●「まずは現職の銀行で、投資家サイドから変化を起こしていけるよう、身近なところから問題提起をはじめていきたい。」(米系銀行勤務の女性)
●「テクノロジーの発達がマイクロファイナンスに貢献しているように、自分の専門分野である金融業界でのテクノロジーの発達(革新的な資金調達方法など)をマイクロファイナンスの担い手にとって有効な形で使えるように、提言や情報発信を行っていく。」(工学系大学院生男性)
という声が聞かれました。

最後に、講師陣、マイクロファイナンス機関の方々、現地の学生、農村で出会った女性はもちろん、
様々なバックグラウンドをもった参加者との貴重な出会いに心から感謝いたします。

マイクロファイナンスや途上国支援、日々のキャリアなど色々なテーマで話せたことでよい刺激をもらい、大変多くを学ばせていただきました。
これからも何らかの形でずっとつながっていきたいと思います。
参加者の皆様の今後の活躍も、とても楽しみにしています。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
レポーター:マイクロファイナンスプロ養成コース参加者 兼財団インターン 中島