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「海外ビジネスに必須なスキル、リフレクションとは」 Part3: リフレクション×ビジネス(課題解決と価値創造)

■ Part3: リフレクション×ビジネス(課題解決と価値創造)

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図2:会社は「社会の公器」で事業を通じて、社員・顧客・仕入先・地域社会・地球といった全ての「社中」に貢献することにより企業価値を上げ、その結果として、株主にも利益をもたらすという考えを表した図

新しいビジネスの立ち上げには、生産者(企業)と消費者(顧客)の関係だけでなく、社内、仕入先、政府、地域社会、株主等、事業に携わる様々な人々と連携し、各者が提供できる価値の連鎖を繋ぎ合わせる(付加価値の総和を拡大する)必要があります。しかし、各者との調整ができず、市場における利益分配が偏り、持続的なビジネスが成立しないことがあります。そこで、事業立ち上げの過程から、リフレクション型対話を通し、本質を見極め、共有し合える価値を創造する意識が重要となります。

リフレクションはビジネスに必須のスキル

――内省はビジネスおいてに具体的にどう役立つのでしょうか?

熊平 リフレクションは自己を客観的に振り返ることと申しましたが、言い換えると思慮深さです。そのため当然ビジネスにも役立つものです。世の中が複雑になり、前例を踏襲するだけでは正解を見出すことができなくなった今、思慮深さは、課題を解決する際に欠かせない力です。システム思考という言葉もありますが、課題を解決する際にも、事象だけに目を向けるのではなく、課題が生み出されている構造に目を向け、本質を見極めることが非常に重要になってきています。これはやはり一人では無理です。複雑な課題の背景を理解するためには、多様なステイクホルダーの視点で、課題を理解し、俯瞰する必要があります。このため、課題の本質をとらえるためには対話が必要になります。人との対話を通して他者の知っている世界、自分の知っている世界を足し合わせて全体をみていくことが必要な時には、リフレクションと対話をペアで実践する必要があります。なぜそう思うのかというスタンスと、評価判断を保留にして何を聞き取るかの大切さが分かっているのはパワフル(強力な武器)ですよね。

現地のシーズからビジネスを構築していく際に、現地の人が困っていることを自分たちの解釈で定義してもソリューションにはつながらないということがあります。あなたが考えるニーズは、本当に相手のニーズであるか、と掘り下げていく思考のきっかけが事実と解釈を分けられるということから始まります。リフレクションは、全く違う市場を理解し、ビジネスをつくる上で非常に大事なものだと思います。

日本企業の課題とリフレクションの必要性

――グローバル開発の分野でも言われることですが、先進国側が途上国の課題を決めて支援する構図と同じで、そもそも課題がある前提ですし、課題を一方的に決めるのも問題ですし、課題の責任を相手に押し付けている可能性があることに先進国側は意識を向けることが必要です。マーケティングにおいても、売りたいモノを売りつけるのではなく、顧客も価値創造の主体として捉える対話型マーケティングが必要ですね。

熊平 日本企業は、世界でも一番性能が良くて、“Japan as No.1”にプライドをもってきたので、自分たちのスーパーハイクオリティな製品をどこの市場でも提供したくなってしまうという心の習慣がありますが、それはあまり意味がないですよね。その人たち(対象消費者)が今どんな状況で、それを次のステップにもっていくために何が必要かに目を向け、そこに合わせて何かを提供していくか、ということが必要。スーパーハイクオリティなものが彼らにとって意味があるものかどうか、ということにたどり着けないんですよね。それも事実と解釈の切り分けであって、自分が持っている解釈はどうであるか、その自分のモノの見方や価値観がそこで利用できるのかをリフレクションできないと難しいと思います

――リフレクションは自分自身の振り返りだけでなく、他者との対話においても役立ちますね。 

熊平 「共感」の聞き方にもこの4点セットが欠かせません。通常、相手の意見だけを聞いて、自分の経験と価値観にあてはめて良いとか悪いとか判断している訳ですが、実は相手の意見を部分的にしか聞いていません。このため、本当に相手の真意を正しく理解している可能性は、多様性が進めば進むほど低いということです。そうなると多様性から学ぶことも出来ないので、いろんな人と出会っているのに自分の枠はずっと変わらないという構図になってしまいます。

――内省や対話姿勢にない人と対話を進めるにはどうすればよいでしょうか?

熊平 質問力を使うしかないですね。まずは「そういうお考えなんですね」と受け止め、「どういうご経験でそういったお考えに?」など背景を尋ねていく、質問しながら相手に対する認知の4点セットを考察していく。自身の内省と同じように事実と解釈を分け、批判、評価判断をしないで質問をする、ということが大事です。人は意外と話し好きなので、話してくれるようになります。なるほどこういう経験をしてこういう価値観を形成しているのでそういうお考えになっているということを理解し、説得するのであればその価値観をもってしても、こういうことなら成り立つのではないかという提案をなげかけていく、というのが戦略になりますね。

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図3:認知の4点セット。意見(opinion)+経験(Experience)+感情(Emotion and Feeling)+価値観(Values)

――多様な価値観を尊重することは「豊かさ」の一つだと考えます。一方、そのベースに共有の価値観や規範がないと、個々の人達ばらばらになり、結果として個々の目標が達成できない状況になることを危惧しています。国家形成、会社設立、プロジェクト立案、ビジネス立案、どの場合も他者との協働事業によって個人では達成できない目標が達成できると思います。何のために私達は一緒に働くのか、そうした合意形成をする上でも、深い対話が役に立ちそうです。

熊平 ゴールを共有する協働事業にはリフレクションと対話は欠かせないですね。成功の評価軸、つまりどういうゴールを一緒に目指すかをすり合せ、合意形成しなければなりません。そのために、自分自身、関わる人達との対話には是非リフレクションを意識して望んで頂ければと思います。

(2021年06月01日)

■インタビューアー:
原孝友
■編集:
原孝友(AFF/AFDP マネジャー)
阿子島文子(AFF/AFDP部長)