Alliance Forum Foundation

  • ライブラリ
  • お問合せ
  • Jpn
  • En

「海外ビジネスに必須なスキル、リフレクションとは」 Part2: リフレクションを通して捉える世界の複雑性と「本当の豊かさ」への問い

■ Part2:リフレクションを通して捉える世界の複雑性と「本当の豊かさ」への問い

diary_zm_reflection02_01

diary_zm_reflection02_02

「次世代型グローバルリーダー育成プログラム」(2017年~)
次世代の経営者・マネジャー、新規事業担当者を対象にしたアフリカ渡航型の人材育成プログラム。ザンビアの人々や研修参加者同士の対話を通して、自身の「思考の枠組み」を捉え直すこと(内省)で、本来の自分を起点に、公正な社会の仕組み作り(基盤・制度)や新しいビジネスに繋げる実践型プログラムです。ザンビアに渡航しAFDPの事業地の訪問や地方農村部のホームステイ、現地政府・起業家との対話等が組み込まれています。

現地の複雑性

――ザンビアを訪問して熊平さん自身にどんな気づきがありましたか?

熊平 渡航前研修でザンビアの基礎情報などを学び豊かではないという印象を受けていましたが、実際に行ってみると首都ルサカにはゴルフ場、大型ショッピングモール、ファストフード店が並んでいました。一方で、道の路肩には(昔ながらの)日用食品等を売る簡易で小さな露店もあり、その社会構造は複雑なものなのだと感じました。日本の戦後にはある種の段階的発展があったのではないでしょうか、しかしザンビアでは、現在、資金があれば何でも持ってこられる状況があり、一つの国の発展の形が、設計した形、賢い形で発展していくということではなくビジネスチャンスをもとに経済発展の支援がなされているので、いびつな形だと思いました。町では豊かな生活、ショッピングモールがあり、その裏では子供たちが一生懸命お金を集めてシンナーを買っていて、都市の複雑な課題を見ました。

――グローバル開発の分野では、アジアは単線・段階的発展なのに対し、アフリカ等では、世界中の先端技術を取り入れたリープフロッグ型(飛び級)の発展と捉える考えもあります。国の発展をどのような型でイメージするかによって、ビジネスや開発協力の在り方も大きく変わります。

また、社会は複雑に絡み合っていることを自覚すること(想像力・共感力)も大事ですね。自分の豊かさがどのような歴史的過程を経て得られているのか、逆に、課題だと思う事柄に対して自分が加担していないかを振り返るためにも内省が役に立つと思います。

アフリカ研修では資本主義経済が浸透しきらない村に滞在することで、改めて自分達が目指したい社会の在り方を考えるきっかけになったと思います。参加者の中ではザンビアの家族の在り方から刺激を受けた方もいました。

熊平 農村部ではそこまでの混沌とした状況ではなく、決して(物質的に)豊かで全てが揃っている社会ではないけれど彼らの本来の生き方に近い状態になっているようでした。一番小さな構成単位である家族の間では子どもが小さい兄弟の面倒をみてお手伝いをして自然に協力しあう良い関係を築いて暮らしていました。地域でヤギをシェアするなど、無駄なことをせずに生きていて、素敵だと思いましたね。日本の普段の生活では見ることが難しいような光景ですね。

人と人とのつながり、子どもに対する教育の姿勢、特に学校教育は日本の方が進んでいるかもしれないけれど人間教育はザンビアの方が上だったかもしれませんね。人間としてどう生きるべきか、スピーディに動く経済社会の中で後回しにしてきたのではないかと感じました。

本当の豊かさとは

――日本では経済成長ありきの価値観の中で本当の意味での「豊かさ」を問わずにきたのかもしれません。「何のための経済成長か」を常に問う必要がありそうです。

熊平 「豊かさ」ということに対してはザンビアに行って常識が崩れましたね。本当の「豊かさ」とは何か、これだけ(物質的に)豊かな日本で生きている私達の方が間違いなく幸せだと思っていましたが、ザンビアを訪れ、幸せの定義そのものが揺らぎました。ザンビアで学んだのは、人間同士のつながりの大切さです。人間同士の本当のつながりで得られる心の安らぎや安心というものが彼らにはあって、私達にはないかもしれない。私たちの多くは、家族でもそれぞれ住んでいる場所や職場が異なっていて、いろんなつながりはあるけれど、本当に心がつながるためのひと時の時間をちゃんとつくれていないかもしれないと思いました。ヨーロッパの国でも、人間同士のつながりを大切にする「世界一幸せな国」がありますが、私達の国では、他のことをより効率的に行うために「つながり」を手放してしまったのかもしれないですよね。

――資本主義経済は分業による生産効率の向上で多様な価値を市場に提供してきました。その反面、分業によって元々あったコミュニティの連帯感を引き剝がしてしまった側面を生んできました。ザンビアの村の人達と話すと、経済成長は必要だけれども、人間同士のつながりをなくす程の価値があるのか、考えさせられます。

異文化×リフレクション

熊平 「本当の豊かさ」という価値観への問いも一例ですが、現地渡航前に参加者それぞれが前提として思っていたことが、どんどんいい裏切りにあっていき、それを毎日のリフレクションによって振り返ることで、より確かな経験としての意味付けにつながりました。リフレクションによって自分事に学びが深まっていく、みんな同じ経験をしても同じことは考えないし同じものを捉えない、それを共有し対話する時間もあるので、学びがより広がっていくという経験をして頂いたのではないかと思います。対話により刺激を受けるのでより新しい発見にも繋がっていく流れができました。価値観が違う人では、お互いに気づくこと、感動することがもともと違うからリフレクションが進みます。

――アフリカ研修では、日頃のビジネスにおいては交流の機会があまりない方々との対話を多く設定しました。

熊平 そういった人たちとの対話やリフレクションは、深い学びを得る手助けになります。ザンビアで幸せそうな人をみて何が幸せなんだろう、何を聞けばいいんだろう、何を見ればいいのだろう、など考えやすくなりす。そもそも私達が持っているモノの見方は何だっただろうと、経験したことの意味付けから学ぶ質が上がっていくということになったと思います。

――リフレクション・研修を通じた参加者の変化は如何でしたか?

熊平 会社から言われてこのアフリカ研修に参加したというような方もいて、最初は「企業人」だったのが、研修1,2日もたたないうちに「一人の人間」としてそこにいるという風に変わったように思います。アフリカでは驚くことの連続なので、そこで感情がちゃんと機能し始めたからではないかと。感情が何かを感じ取って思考につながっていきますが、感情が豊かに動き始めていって、自分を装う余裕がなくなっていった、というのが正直なところかもしれませんね。そんな中でみんなが正直に話せるという心理的安全があの場にあったので、誰もが、自分を出すことを自分に許可することができました。現地の住民、ベンチャー起業家なども含めて人間らしくて思いっきり生きている人々に触れることによって企業人として自己の一部を切り出した自分ではなく、人間としての自分の可能性に触れ、自己の内発的動機が目覚め、自分自身が、生きている、生命を感じることができました。その上で、企業人として、自分は何を成すべきかと、自分に問いかけることができました。

多様性受容と自己受容、そして内発的動機へ

熊平 研修参加者は毎日のリフレクションの中で毎回、価値観を尋ねられます。自分は何を見て何を感じて、その背景にどんな人間性があるのかを日々振り返させられます。隣の人をみれば相当違うということを感じることもできて、誰もが違って魅力的で自分も違って魅力的という風に、他人を受け入れやすくなり自分自身に対しても自信を持てるようになられたのではないかなと思います。会社主語ではなく自分の内発的動機を呼び起こす、見つめなおす、最後には自分がどうしたいか、会社としてではなく、「自分」としてプレゼンしてもらいました。誰もが疑う余地なく、自分の本心や内発的動機からお話しされていましたね。